2014年3月13日木曜日

核・原発の非人道性を問う                  衝撃のドキュメンタリー『不毛の地』 日本で公開!


『不毛の地』の感想

4・11 日本原水協主催上映&トークでの感想

 ・「不毛の地』言葉にならない気持ちになった。知らなかったとともに、今も続いていることに。そして、あまりにも今の日本と共通することに。

・「不毛の地」…六ヶ所村、核燃料サイクルを抱える日本人として、他人事ではなかった。福島原発事故と重なるところも多かった。(弱者が犠牲になる)

・大変刺激的でした。私の心が風化しつつあることに気付かされました。

・製作したオレグ・ボドロフ氏、高草木さん、有原さんに感謝いたします。
・日本はもとより、全世界、核兵器を持つ国々すべての方に観ていただきたい。
観るべきです。
・上映会を企画します。

・ミーリャと福島、トークも含めてとても良かったです。色々な人にもっと見てほしいと思いました。ミーリャたちの運動をはじめてちゃんと知れて良かったです。

「不毛の地」はショックでした。知らないことがたくさんあった。



2014年2月18日火曜日

『不毛の地』チラシPDF

  下記からダウンロードできます。
最初に開いた画面は、表示用で荒い画面ですが、矢印↓でダウンロードすると、チラシの表裏2ページをきれいなデータでダウンロードできます。
『不毛の地』PDF
★サイズが大きいので、ダウンロードに時間がかかる場合があります。


2014年2月7日金曜日

作品解説:問いかける『不毛の地』

                                      日本語字幕制作者 有原 誠治 
  ロシアは、ウラル山脈の東西で欧州とアジアに分かれる。欧州寄りの西側にはモスクワを始め豊かな都市があり、ロシア人が多く住む。東側はウラル地方と呼ばれ、広大な大地に多様な文化を持つアジア系の民が多い。

この物語は、北欧ロシアに位置するムルマンスクの美しい町、ポニャルニェゾリの住民が、原子力発電所に大きく依存しながら豊かな生活を営んでいることから始まる。

 実際、ウラル山脈の西側には32の原発が稼働している。その使用済み核燃料は、ウラル山脈東側チェリャビンスクにあるマヤーク核コンビナートで再処理されている。マヤークには、カラチャイ湖を含む無数の湖沼があり、ウラル山脈から流れ出たテチャ川が横断している。
 

 本作品は、マヤークが排出する放射線廃棄物(液)が、1948年からテチャ川に直接投棄され続けているという驚くべき事実を明らかにする。さらに、マヤークにおけるずさんな核廃棄物管理のため、57年にはウラルの核惨事と呼ばれる爆発事故を起こしウラル地方一帯を大規模に汚染し、67年にはカラチャイ湖の放射線汚染泥が強風で飛散。再びウラル地方一帯を汚染したという。しかしながら、旧ソ連も現ロシア政府も、その事実と住民たちの被害を隠蔽し続けて来た。

 汚染され続けて来たテチャ川流域に、ムスリュモワ村がある。その住民たちは、ガンをはじめとする不可解な病気「川の病気」に襲われ、健康と生活を破壊され続けて来た。絶望的な村に生まれ育ったミーリャとゴスマン夫妻は、NGOテチャを立ち上げて、テチャ川流域の被害とマヤークのずさんな実態と非人道性を告発して活動している。その二人の勇気ある案内で、私たちは核と原発政策の悪魔的な現実に直面することになる。

 この作品の意図について、製作者で脚本を担当したオレグ・ボドロフは、次の3点を挙げている。

 ①ロシアの欧州部に住む人々(原発電力消費者)と当局者(原発と核産業を推進する側)たちに向けて。
 理由は、ウラルの環境汚染について何の情報も持っていないから。

 ②政治家やヨーロッパ諸国のNGOに向けて。
 理由は、ロシア政府マヤークを使用して欧州各国の研究炉の使用済み核燃料の再処理を請け負うことを目論んでいるため。

 ③地球上の全ての人々のために向けて。
 理由は、原発など民生用の核技術と軍事用核技術は分けることができない一つの複合技術であり、その結果、自然と人間の健康に同じような影響を与えるから。
 
  ボドロフのこの意図は、見事に成功している。 なぜなら、『不毛の地』を見終わると誰しもが自国と世界の核・原発のあり方を考え込まざるを得なくなるからである。

作品と制作スタッフ

作品について
 タイトル:『不毛の地』
 原題:WASTELAND
 制作国:ロシア
 制作年:2009年
 仕様:スタンダード・サイズ カラー ステレオ 33分

スタッフ
 脚本: ・オレグ・ボドロフ
      ・ゲンナジ・シャバリン
         ・ミカエル・リゾフ

 監督カメラマン: ゲンナジ・シャバリン

 製作者: オレグ・ボドロフ(:NGOグリーンワール会長)


 音楽: ・アルフレッド・シュニットケ
      ・フィリップ・グラス
           ・マキシム・ベレゾフスキー
           ・エデュアルド・アルテミエフ

  謝意: 以下の方々の援助に感謝を表明する
     ユリ・イワノフとヴィタリイ・ブダレフ、NGOコラ環境センター、アパティティムルマンスク地域
     アンドレイ・タレヴリン 自然のためのNGO地域公共ファンド、チェリャビンスク
     ナタリア・ミロノワ、核の安全のためのNGO運動
     ミーリャ・カビロワとゴスマン・カビロフ、NGOテチャ、ムスリュモヴァ、チェリャビンスク
     専門家:デービッド・ロウリ(英)、アラン・プーリ(米)
     自然のためのNGO地域公共ファンド
     ムスリュモヴァ住民のみなさん

 コピーライト:NGOグリーンワールド



 日本語字幕版制作

  翻訳: 高草木 博
 
  字幕制作: 有原 誠治

  協力: 原水爆禁止日本協議会

  制作普及:『不毛の地』普及委員会
 


製作者 オレグ・ボドロフから「日本のみなさんへ」

2014年4月 オレグ・ボドロフさんからのメッセージ
  「親愛なタカさん、日本の友人のみなさん、私にとっても、仲間たちにとっても大変感動的なことです。ドキュメンタリー「不毛の地」への感想をありがとうございました。福島の悲劇とマヤーク再処理施設のドキュメンタリーを一緒に上映するというのはいいアイデアだと思います。核技術の民生利用も軍事利用も人間への帰結は同じです。
 もう一度感謝します。8月には日本でお会いしたいと願っています。次のアイデアと可能な共同の行動について意見交換したいですね。春のバルチック海岸からあいさつを贈ります。オレグ」

Dear Taka-san! Dear Japanese friends! It is very emotional moment for me and my colleagues!
Thank you for the comments about the Wasteland documentary. I think it was very good idea to show the documentary about the Fokushima tragedy and about Mayak reprocessing facility. The consequences for the human from civil and from military nuclear technology is equal!
It would be nice to start more discussion about it!
Thank you very much again and I hope to meet you in Japan in August.
I hope to discuss with you some ideas and possible common actions!
All the best from the spring Baltic Sea coast.
Your
Oleg

2014年3月 オレグ・ボドロフさんからのメッセージ

親愛なタカ(高草木博)さん
親愛な友人のみなさん  

  私や私の仲間たち、ドキュメンタリー「不毛の地」の監督兼撮影を担当した私の友人、ゲンナジ・シャバリンにとって、(日本語版の完成は)感動の瞬間です。このドキュメンタリー「不毛の地」を通じて日本でも理解が広がることを心から嬉しく思っています。

  ロシアでの上映は、障害が多くほんとうに大変です。しかし、いまや日本ではいくらでも見てもらえるようになりました! けれどもこのフィルムの日本語版をつくることはもちろん簡単ではなかったと思います。あなたから、このことを可能にしてくれたすべての日本の仲間たちに心からの感謝を伝えていただけますか?

  あなたのメッセージは心のこもったもので、私たちみんながこの地球の一つにつながった家族であることを感じさせてくれました。そのことにも感謝します。

 春のバルチック海岸より愛をこめて。
 オレグ ゲンナジ

Dear Taka-san!
Dear friends!
It is very emotional moment for me and my colleague and friend Gennady Shabarin who was a director and cameraman of the Wasteland documentary.
We are very glad to be understandable in Japan with our Wasteland documentary. It was to many barriers to show this documentary in Russia! But now it is so easy to show in Japan! But I think it was not so easy to do the Japan version of this film. May I ask you to send thanks so much to all Japanese colleagues  who did it!
Your message is so warm and we feel that we are one ecological family of our planet!
Thank you for this!
With Love from the Spring Baltic Sea coast.
Yours Oleg and Gennady


「不毛の地」の製作者 オレグ・ボドロフさんに聞きました。

 私たち普及委員会は、「不毛の地」の日本での公開にあたって、脚本とプロデューサーを担ったオレグ・ボドロフさんに、「不毛の地」の制作意図、これまで普及した場所とそこでの反応、そして日本への期待などをうかがいました。

①どんな目的でこの作品をつくりましたか?

 ボドロフ:このドキュメンタリーはロシアの欧州部分に住む人々と当局者たちに向けて作りました。そこではいまも32基の原子炉が運転され続けています。欧州部に住むロシア人の原発電力消費者たちは原発の民生用核エネルギーから生じる使用済み核燃料の再処理がもたらす環境上の影響について何の情報も持っていません。
 私たちは、ウラル地方に至るロシアの欧州部分から、マヤークの再処理施設のある秘密都市オゼルスクへ、情報の窓を開きたかったのです。ドキュメンタリー「不毛の地」はマヤーク再処理施設周辺の環境状況が欧州部のロシアで「クリーンな原子力エネルギーを消費していることの結果であることを示しました。環境上の危険は欧州部のロシアからウラル地方へ、ムスリュモワ村へと移っていきました。だから欧州部ロシアにもまた責任があるのです。問題は、もしこうした結果を生んでもなお、原子力発電を続けることができるのか

 私たちはこの映画を政治家やヨーロッパ諸国のNGOに向けて作りました。ロシアの国営企業は、ソビエト連邦によって建設された欧州研究炉の使用済み核燃料を再処理することによってカネをつくりたがっています。ロスアトムは欧州諸国と米国に対して、マヤークに再処理技術を持っていることを連絡しました。欧州諸国は使用済燃料を東欧からマヤークに移す案が気に入っています。しかし、政治家たちはマヤークの再処理技術について何の情報も持っていません。それはロシアの国家機密です。なぜならそれは核兵器のための技術でもあるからです。
 「ノーインフォメーション」ということは「ノープロブレン」なのか? 私たちは、欧州の政治家たちに「不毛の地」によってマヤーク一帯に起こった「結末」を知らせます。
 「不毛の地」(英語版)をドイツとノルウェーの政府に送りました。これらの国は研究炉の使用済み核燃料の保存のための長期的解決モデルを調査しました。ロシアのマヤークでの再処理はもっとも現実的な選択でしたが、ドキュメンタリー「不毛の地」を贈ったのち、ドイツとノルウェーは、ロシアに「問題を移す」という案を嫌うようになりました。

「不毛の地」は地球に住むすべての人々のために制作したものでもあります。「不毛の地」の使命は、民生用核技術も軍事用核技術も自然や人間の健康には似たような影響を与えることを示すことです。それは一つのコインの裏表なのです。
 マヤーク再処理施設はロシア原子力潜水艦の原子炉の使用済み核燃料も再処理しています。マヤークでウラン235を抽出した後、ロスアトムはそれから軍用、潜水艦用ウラン、チェルノブイリ型原子炉であるRBMK1000の燃料などを生産します。だから、軍事用の核物質は民生用の核物質へと変わり、加えて巨大な環境問題をマヤーク周辺に創りだしています。しかもRBMK1000型原子炉は両用の技術でもあります。この原子炉は兵器級プルトニウムを生産することもできます! 民生用核技術は軍事用の仕事ができるのです。
軍事用と民生用の核技術を分けることはできません。それは一つの複合技術です。だから、もし私たちが核兵器に反対して活動するなら、民生用核技術にも原子力発電にも反対して行動する必要があります。物理学者、環境主義者、反核活動家であれというのが私のビジョンです。

②制作公開年は、いつでしょうか。

ボドロフ:はい、2009年に制作しました。
 最初の上映はチェリャビンスクで行いました。マヤークの施設が今も操業しているところで。2010年に「不毛の地」はロシアのバイカル地方イルクーツクで行われた、国際ドキュメンタリー祭「人間と自然」で賞を受けました。

③ロシア以外に普及したところは? そしてその反響は?

ボドロフ:英語版を作りました。ドイツの会社が、ドイツ、スイスで普及するためにドイツ語に訳しました。以下のWebで見ることができます。
 http://www.videowerkstatt.de/schwerpunkte/die_atomfabrik_majak/ 

 バイカル国際ビデオ・ドキュメンタリー祭(2010年)で「オーディエンス賞」(視聴者賞)を受けました。そしていま、カザフスタンの人たちと今カザフ語にすることを話し合っています。

④このドキュメンタリーを制作、普及するうえで、核産業などからの抵抗はありましたか?

ボドロフ
: はい、ありました。
「不毛の地」をつくった直後、私たち「グリーンワールド」やNGOのコラ環境センター(ムルマンスク地区)仲間がコラ原発周辺の都市での巡回・移動「不毛の地」ショーをおこないました。ムルマンスクや他の都市でも上映のためのホールを予約しました。ところがショーは間際になって地元の当局により妨害されたのです。けれども私たちは200本以上のドキュメンタリーをつくり、NGOのみなさんに見せました。

去年、グリーンワールドは2度にわたって、「外国のエージェント」として検察から調査を受けました(ロシアにはそういう法律があるのです)。当局はロシアの国益に反する活動のようなものをグリーンワールドの活動のなかに見つけたかったのでしょう。最初の検査は、すべてのロシアのNGOを検査するようにとのロシア大統領の勧告のようなものだったのですが、二度目のチェックはロスアトム企業体のひとつが要請したものでした。(2014年2月)

⑤マヤーク核コンビナートから現在も「放射性核種は引き続き排出されている」のでしょうか。

ボドロフ:はい、その事実を確認します。
 これは法律家であり、核に関する法律の専門家でもあるアンドルー・タレヴリンなど、私の同僚からの情報です。アンドルーは、チェリャビンスク大学法学部の准教授です。自然の生態系への液体放射性廃棄物の排出は、ロシアの法で禁じられているにもかかわらずいまも続いています。しかしロシアの規制当局(ロシア衛生監視局長)はマヤーク核施設に特別(一時的な)規制を適用しました。

 カラチャイ湖には中位の放射性廃棄物が排出されています。テチャ川は低レベル放射性廃棄物です。最近数年の液体放射性廃棄物投棄の総量は、1年で3~4百万立法メートルです。以前は二倍でした。

 2014年には60万立方メートルの液体放射性廃棄物がこれらの自然水域に投棄されることが計画されています。これらの数字は昨年開かれた会議でのロスアトムの報告からとったものです。 マヤークの核施設は2017年まで放射性廃棄物を投棄します。その時までに液体放射性廃棄物処理の特別プラントを建設する計画です。

 このようにカラチャイ湖は、ロシア原潜の原子炉、民生用原子炉VVER-440(コラ原発の4機とノヴォヴォロネジの原子炉の2機)の使用済み核燃料再処理と、外国の科学用原子炉の使用済み燃料の再処理の技術的サイクルの一部となっています。


 カラチャイ湖は第9号池と改名され、テチャ川の貯水カスケード【連続の滝】は3号、4号、10号、11号技術池(人工池・訳者)とよばれています。その後は、自然の景観ではなく、技術的計画の一部のようです。テチャ川の下流では、人々はいまも暮らし続けています。(2014年3月9日)

ウラル住民の核被害

 ドキュメンタリー『不毛の地』は、ロシアのチェリャビンスクにあるマヤーク核施設コンビナートにおけるずさんな核廃棄物(液)管理によって、ウラル地方一帯が大規模な被爆をくりかえしていたことを告発しています。

 それは、旧ソ連時代の原子爆弾の開発から始まりました。1948年、放射線廃棄物を直接テチャ川へ投棄を開始。その核兵器開発施設はその後、マヤーク核コンビナートとなり、ロシア全土の原子力発電所や原子力潜水艦などの使用済み燃料の再処理を担うようになった今も、廃棄物(液)の投棄は続いているといいますから驚きです。

 ずさんな核管理は、さらに大きな被害をもたらします。1957年、キシュティムの核廃棄物貯蔵タンクが爆発。248の村が避難、50万人が被災者となり、ウラルの核惨事と呼ばれました。ところが、ソ連政府はその事故を極秘にし隠蔽します。さらに、事実を知ったアメリカや英国までもが自国の核政策のために秘密にしたことを、中国新聞社が次のように報じています。

 「≪隠されたウラルの核惨事≫  1957年、マヤーク核施設で起きたタンク爆発事故は、86年のチェルノブイリ原発事故が発生するまで、旧ソ連で最大の放射能汚染事故だった。ところが、ソ連ではすべてが秘密にされた。   核開発でソ連をリードする米国の中央情報局(CIA)は、59年にこの事故を知った。しかし、57年に英国ウィンズケール(現セラフィールド)で起きた軍事用原子炉の大事故や米国内の核工場での事故などもあり、「自国の核開発の足かせになっては」と、米政府も秘密を保った。
 「ウラルの核惨事」「キシュティムの事故」として世界に知られるようになったのは76年。英国に亡命したソ連の生物学者ジョレス・メドベージェフ博士が、科学雑誌に暴露したのがきっかけである。ソ連政府は89年、ペレストロイカが進む中で、ようやく正式に事故を認めた。
 事故では従業員や住民被害のほかに、マヤーク敷地内の除染作業などに従事した、全国各地から招集の兵士2万人以上も被曝した。 (中国新聞 21世紀核時代負の遺産)」

その後も、マヤークのずさんな核監理は続きます。核廃棄物のタンクへの貯蔵ができなくなった施設管理者たちは、コンビナート地区内にあるカラチャイ湖を廃棄物(液)の貯蔵庫とします。そして67年、ロシアを襲った大干ばつで干上がったカラチャイ湖は、湖底の汚染泥がむき出しとなり、折からの強風によって再びウラル地方一帯を汚染したのです。

 テチャ川流域にあるムスリュモワ村は、1948年から現在までの66年間、マヤーク核施設コンビナートに汚染され、住民たちは被曝し続けたことになります。

 作品は、国際的な批判があって、ムスリュモワ村の移転が開始されたと告げて、その移転先もまた汚染地域だといいます。NGOテチャのゴスマン・カビロフが憤懣やるかたなく「核実験の続き、人体実験ではないか。」と語っています。


公開に至るまでとNGOテチャ

                             高草木 博(原水爆禁止日本協議会代表理事)
 ドキュメンタリーの主人公になっているミーリャ・ガビロワが最初に原水爆禁止世界大会に来たのは2001年です。それまで私自身、ソ連核実験場があるカザフスタンのセミパラチンスクやロシアのアルタイに何度も出入りし、その際、チェリャビンスクの秘密都市や「マヤーク」の核事故のことは聞いていたので、日本で紹介したいと思い、代表を招請しました。

 当時ミーリャが代表していたのは「アイグル」(夕顔)というNGOで、カザフの「ネバダ・セミパラチンスク運動」と同様、1989年に立ち上げたとのことです。ミーリャが議長でした。
 ソ連の最初の原爆実験(1949年8月29日、セミパラチンスク)に向けて、1948年にチェリャビンスク州に秘密都市(チェリャビンスク65とか言ったはず)をつくり、そこの核施設「マヤーク」は、ウラン濃縮から使用済み燃料再処理・プルトニウム抽出までおこなう、文字通りコンビナートとして構想されたもののようです。

 その後、原水爆禁止世界大会には、ミーリャを中心にほぼ毎年代表を迎え、2012年も、ミーリャの推薦で本作品の製作者オレグ・ボドロフ氏を迎えました。私の方も、一度はチェリャビンスクに医師や代表団を送りたいと思っていたこともあり、意気投合し、ボドロフ氏が「見て欲しい」といってDVDを下さったものです。
 
 日本語版をというのは、私が思いついたことで、すぐに訳し始めたのですが、仕事が重なり中断。昨秋、改めて続きの訳を終え、有原誠治さんに声をかけて日本語字幕版の制作となった次第です。
 ボドロフ氏には、日本語版にして普及することはもちろん相談し、ご了解をいただきました。これまで、ロシア語の他に、英語、ドイツ語、日本語に翻訳され、カザフ語への翻訳が進行中だそうです。

 ミーリヤの「アイグル」は、現在「NGOテチャ」として活動していることが、作品の中で紹介されています。その活動についてミーリヤに問い合わせたところ、次のようなお知らせがありました。

NGOテチャについて ミーリヤ・ガビロワ
「テチャ」は1995年にNGOとして登録しました。
目的は以下の通りです。①被ばくの危険について人びとを教育すること、②被災地の環境回復のためのプロジェクトを推進すること、③環境に優しく浪費のない技術の促進、④環境上の放射線の危険を減らすための国際的つながりの拡大と国家間の平和と友好の強化、⑤環境分野での人々の権利と自由の実現と保護、⑥環境上の危険や放射線の危険を削減するためのプロジェクトや提案の支援。

                                                   以上です。